自然と再接続する未来の居住空間とは (AKI INOMATA/アーティスト)

IMAGE BY TAKESHI KAWANO

IMAGE BY TAKESHI KAWANO


古い木造建築から、自然と隔絶されたコンクリートに

東京・文京区生まれの私が育った家は、古い木造建築で、外の扉が傾き、いつも閉まらなかったことを覚えています(笑)。あまりにも古いので、さすがに建て替えることになり、両親があれこれ考えて、新居を建てました。ですが、結局のところ、夏は暑く、冬は寒い。他にも様々な不具合があり、家を建てることの難しさを子どもながらに感じていました。

そんな我が家では、私の小さい頃から猫を飼っていたのですが、家の中の場所取りは、必ず猫に先をこされるんです。それは日当りのよい窓際やソファー、ヒーターの近くなどですが、家のなかで一番居心地がよくて快適な場所を、猫はよく知っています。なので、猫がいるところに、すかさず私も行く感じでした。猫からすれば、迷惑だったかもしれませんが(笑)。

育った文京区には田畑や野山など、ひらけた環境はなく、あくまで「自然は遠くの存在でしたので、自然から隔絶されているという意識が強くありました。また、日本の木造建築から、鉄筋コンクリートへと実家が建て替えられたことも、自然とのつながりがより一層、断絶されていると感じる機会となりました。
 

分断されてしまった自然と再接続する

この体験は、私の制作のひとつの原点になっています。都市空間は、人間が生活する上で非常に効率のよいシステムである一方、自然を支配しようと努力をしてきた近代化流れが、自然と都市という二交対立を作ってきたように思いっています。分断されてしまった自然と人の関係を、ひとつの円環の中につなぎ直すことが出来ないものかという疑問が制作のモチベーションにつながっています。

アーティストは旅人なので、私は10年後、望むと望まざるに関わらず、移動し続ける暮らしになると思っています。とはいえ、飼っている生き物たちの飼育は常に悩みの種なので、自分のラボは、何処か一カ所につくれると良いのが本音です。それから、 「未来の居住空間」という大きなテーマについては“自然といかに再接続できるか”がポイントだと思っています。

近代化により発達した技術を駆使し、自然から隔離された都市を構築してきた私たちですが、ここで一度立ち止まって、自然との関係性に目を向けることは出来ないでしょうか?都心でよく見かけるような箱庭のような自然を持ち込むことではなく、自然という巨大な生態系の一部として人間を再定義することから未来の生活環境を考えていくことが重要だと感じています。
 

AKI INOMATA (アーティスト)

生き物との恊働作業によってアート作品の制作をおこなう。17年現在、アジアン・カルチュラル・カウンシルのグランティとして渡米中。主な作品に、3Dプリンタを用いて都市をかたどったヤドカリの殻をつくり実際に引っ越しをさせる「やどかりに『やど』をわたしてみる」、飼犬の毛と作家自身の髪でケープを作り互いが着用する「犬の毛を私がまとい、私の髪を犬がまとう」など。
「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」ほか国内外の展覧会に参加。
http://www.aki-inomata.com/