「デジタルとフィジカルの垣根を越えた、新たな時空間が生まれてくる」 落合陽一(メディアアーティスト)

IMAGE BY TAKESHI KAWANO

IMAGE BY TAKESHI KAWANO

小さな頃は、1970年代の流行りの建築のような家に住んでいました。場所は六本木、一軒家で地下にバーカウンターとピアノと書斎があるような家です。高台から続く長い坂の途中にありました。地上階は日当たりがよく、地下は常にひんやりとした感じで、たくさんの本に囲まれて育ちました。
 
ピアノを習っていたので、地下室でピアノを弾くことが多く、また。自由研究や実験やコンピュータ遊びも地下においていたので、子供の頃から地下室にこもっていることが好きな子供だったと思います。シャーレや試験管を並べたり、マシンを使ってコンピュータグラフィクスをいじったりしていました。全体的に薄暗い中で作業するのが好きだったなぁ。

そのせいか、いまでもラボのような空間で時間を忘れて過ごすことが好きです。それは今でも継続していて、いま思い返せば、地下室にこもっていた体験から来ているんだろうなぁと思います。長い時間こもって何かを作り出す工程やその高揚感に惹かれて今の自分になりました。ドラゴンボールに出てくる精神と時の部屋のような場所が好きです。

今から10年後くらいには、日当たりがいい場所と悪い場所を交互に行き来するような、籠れる場所と人間性を捧げられる場所の同居する空間で過ごしていきたいと思います。できれば10年後くらいに今やっている多方面の努力が結実して、じっくりものを考えて作る生活に移行したいです。そういう暮らしができる環境がいいな。

未来の家には、ロボットと自動運転車、透明度が変わる素材でできた調光器、窓のような照明、鳴った音を消す装置、あとはコンピュータ制御されたクリーンな植物と、カンパリとフェルネブランカがあれば無限に働けると思います。

僕の考える未来の空間は、情報と物性の垣根が超えた空間。我々の人間性はアップデートされ、物理世界にあるものでも、情報世界にあるものでもどちらでもよくなる。我々が持っているイメージと物質のギャップが少なくなり、その相互の世界のオーバーラップを気にしなくなっていく。未来の空間は、空間や時間の垣根を越えて、空間と精神の壁が取り外されていくような世界になっていくと思います。

IMAGE BY TAKESHI SHINTO

IMAGE BY TAKESHI SHINTO

落合陽一(おちあい・よういち)

筑波大でメディア芸術を学んだ後、東京大学を短縮修了(飛び級)して博士号を取得。2015年5月より筑波大学助教、デジタルネイチャー研究室主宰。経産省よりIPA認定スーパークリエータ、総務省より異能vationに選ばれた。研究論文はSIGGRAPHなどのCS分野の最難関会議・論文誌に採録された。作品はArs Electronicaを始めとして様々な場所で展示され、Leonardo誌の表紙を飾った。応用物理、計算機科学、アートコンテクストを融合させた作品制作・研究に従事している。先月発売された著書『これからの世界をつくる仲間たちへ』では「年収1000万の会社に入ることではなく、年収1000万の市場価値がある人間になること」「思考体力」「世界は人間が回している意識」をキーワードにし、次世代の社会での働き方や価値観について力説・提案をし続けている。
(写真:神藤 剛)