「イメージの海にもぐれるような、空間と情報が接続した小さな部屋」矢津吉隆(美術家/kumagusuku代表)

IMAGE BY TAKESHI KAWANO

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空間の記憶

子どもの頃は、家族6人でのマンション暮らしでした。4階建ての2階で間取りは4LDK、2歳年下の弟と一緒の部屋で勉強机を並べて2段ベッドに寝ていました。4部屋あるうちの2部屋は和室でした。祖母の部屋には仏壇があって線香の香りがいつもしていました。

中でも、自分が寝ていた木製2段ベッドの下の段が好きでした。ちょうど良い具合に狭く囲われた空間は乗り物に乗っている感じがして、よく弟や妹と一緒に布団や枕を使って操縦席や座席をつくり、宇宙船ごっこをしていました。黄色いタオルケットを被るだけで異世界に行けた気がします。

子どもの頃から洞穴の秘密基地や木の上の小屋など狭く外界から隔絶された空間に対しての憧れが強くありました。父が建築設計関係の仕事をしていて家に間取り図や図面などの資料があったこともあるかもしれませんが、今でも建築(特に住宅)に対しての憧れの気持ちがあります。最近、自分の活動でも建築に関わるプロジェクトが増えてきて、単純に空間をつくることに対してワクワクしている自分がいます。

いまから10年後、どんな家で暮らしていたい?

1日の移り変わりを感じることができる環境に身を置いていたいと思います。朝の匂いや夕立の後の湿度、夜の虫の鳴き声。忙しく過ごしていてもふとした瞬間にそう言った機微を感じることのできる家に住んでいたいですね。家族と猫と一緒に暮らせる、大きい家より小さくて狭い、ぎゅっと詰まった家がいいです。

そして、作品のアイデアを考えるためだけの小部屋が欲しいです。ここだけは本や資料が山積みになっていても誰にも文句を言われない、いつでもその部屋に入れば瞬間的に作品のイメージの海にもぐれるような場所です。

「未来の空間」とは?
空間と情報が分断されることなく接続されている状態にいたいと思います。

 
© yoshitaka yazu

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矢津吉隆(やづ・よしたか)

美術家 kumagusuku代表。1980年大阪生まれ。2004年京都市立芸術大学美術学部美術科彫刻専攻卒業。京都造形芸術大学非常勤講師。在学中よりアーティストグループAntennaの中心メンバーとして活動。2007年Antenna脱退し個人活動を再開。立体・絵画・映像・写真・インスタレーションなど様々な媒体を用い表現する。主な個展に2011年「umbra」(Takuro Someya Contemporary Art、東京)、2013年「La Vouivre」(ブザンソン・フランス)他多数。

主なグループ展に2012年「隠喩としての宇宙」(タカイシイギャラリー京都&ホテルアンテルーム京都)、2014年「京都府美術工芸新鋭展」(京都文化博物館)他多数。

その他、プロジェクトとして2012年に「kumagusuku」を始動、2013年に小豆島にて瀬戸内国際芸術祭 醤の郷+坂手港プロジェクトへ参加、2015年からは「KYOTO ART HOSTEL kumagusuku」(京都)にて、旅館業許可を得て正式開業。