「気まぐれ女子の映像ライフ?」古屋遥(クリエイティブ・ディレクター)

EDIT BY ARINA TSUKADA TEXT BY ETSUKO ICHIHARA PHOTO BY RYOSUKE KIKUCHI

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TEXT BY ETSUKO ICHIHARA
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演劇的アプローチとテクノロジーを融合させ、現実空間に「魔法」を生み出す演出家、クリエイティブディレクターの古屋遥さん。LUIS VUITTONの展示会におけるホログラムパフォーマンスや、監督を務めた安室奈美恵「Birthday」MVでは、早着替えからダンスシーンまでをワンカットで撮影した映像演出で大きな話題を呼びました。今回、「超短焦点プロジェクター」を使って、自宅に「未来のペット」を出現させた古屋さん。映像と空間が融合することで生まれる未来の空間について、可能性を伺いました。

超短焦点プロジェクターが室内に描き出す「デジタルペット」


この演劇を学んでいたバックボーンは今の仕事と強くつながっていますね。演劇というのは、何もないところに空間やストーリーといったすべての要素を使って、あたかもそれが目の前にあると観客に信じこませること。そうした古くから続いてきた演劇の手法に加えて、今ならCGやホログラムなどの様々なテクノロジーをプラスすることができる。そうした新しい技術によって『不思議』を生み出す演出が、私の目指す『ファンタジーを現実社会に実装する』仕事をになっていると思っています」

そう語る古屋さんの自宅には、アーティスト名義でもある「惑星ハルボリズム」の名にふさわしく、お仕事場には独立する際に知人から譲り受けたという望遠鏡や地球儀が並んでいます。

今回はタイ・バンコクのグループ展で発表した「架空のペットショップ」で披露したペットたちを、超短焦点プロジェクターで自宅に投影してみた古屋さん。

「この超短焦点プロジェクターは、すごく小さい上にポータブルというのも良いですね。投影面の黒部分がキレイに映るのもいいです。今日は友人のアニメーター、山岸遥さんがモデリングしてくれた3Dアニメーションを投影して、一緒にお散歩できる『デジタルペット』のようなものができないかなと思っていて。ミシェル・ゴンドリー監督の映画『ムード・インディゴ』でネズミの映像を投影するシーンがあるんですが、あのイメージを再現できないかな、と」

静止画を何度か投影した後、動画のデータに切り替えた瞬間、空間内にマジックが起こりました。

「わっ、すごい。映像をうつすと全然印象が違うんですね!一気に『ペット』としてのリアリティが増した気がします。やはり動いているものを人の目は追ってしまうし、信じ込みやすくなるのかもしれませんね」

今度は、普段はアイデア帳として使っているという真っ白な絵本に投影してみた古屋さん。

「本に映すと、映像と投影するモノとの間にストーリー性が生まれて面白いですね。つい、映像がはみ出ないように絵本を動かしちゃいます(笑)」

気まぐれ女子のための、プロジェクター


超短焦点プロジェクターで、様々なアイデアの実験を繰り広げてくれた古屋さん。テクノロジーが拡張する未来の空間、未来の映像については、どう考えているのでしょうか?「私はモノに魂があると信じているんです。何かの道具で、その利便性を求められるようなモノに対しても、愛着や情が湧くような世の中になったらいいなと思っていて。今回のバーチャルペットみたいに何かを擬人化することで、命を飼うということの意味を考えてみたり、空間やモノに対する見方を変えたりするようなことに取り組んでいきたいですね」

モノとテクノロジーが融合する「IoT」の時代、日本のアニミズム的な「モノに魂を感じる」感性こそが、まだ見ぬ未来の空間を作り出すのかもしれません。また、古屋さんは「ギークな機器と思われがちだけれど、女子こそ、プロジェクターを使う時代ですよね」と語ります。

「なんといっても、女子は気まぐれです。くるくると変わっていく女の子の嗜好や流行にあわせて、インテリアもファッションも、その日の気分で変えられるといいなと思うんです。ヴァーチャルな試着システムから、ネイルの付け替えも映像を投影すればすぐにできそう。映像に投影してから、気に入ったものをそのまま買えたりできるというのも良いですね。『気まぐれ女子のためのプロジェクター』っていう企画をやりたいです(笑)」

映像が空間を変える。それが自分のリビングスペースとも交わる時、新たなライフスタイルが始まるのかもしれません。
 

古屋遥(ふるや・はるか)
演出家・クリエイティブ・ディレクター。英ブリストル大学演劇学科卒。 ドイツ、イギリスで演劇(空間、映像、音楽、ダンス)の総合演出を経て、広告業界へ。 映像制作会社 太陽企画にて、映像の演出をはじめ、空間・映像・テクノロジーを組み合わせた企画演出を行い、 新しいファッションショーや店頭ディスプレイのあり方など、「体験」や「文化創造」に重きを置いた仕掛け・仕組みを作る。 2014年7月に独立し、フリーランスの演出家としてさまざまな創作活動に携わる。
http://harukafuruya.com/