音楽がそこに在る。という心地よさ no.9 城隆之(作曲家)

「音と共に、暮らす」をテーマに、アーティスト活動やCM音楽制作、サウンドデザインまで幅広く活動する作曲家・no.9こと、城隆之さん。
「呼吸をするように、365日音楽をつくる」という城さんのところに、突然やってきたグラスサウンドスピーカー。それが暮らしを大きく変えたといいます。クリエイティブ哲学とともに、お話を伺ってきました。

TEXT BY SATOKO HIRANO EDIT BY SATOKO HIRANO PHOTO BY TAKEHIRO GOTO

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木と緑に彩られたアトリエのような心地よい空間を構成するものは、照明からオブジェに至るまですべて、城さんに大切に選ばれたものたち。だからこそ、ひとつひとつが際立ち、丁寧な暮らしが生まれる。そんな印象を受けます。



空気を吸うように、音楽をつくる

 

365日音楽を作るモチベーションは、どこからくるのでしょうか。

「大切にしていることは、あんまり意識しないことですね。

僕はルーティンで作曲したい、と思っているんです。

寝て、起きて、ご飯を食べるのと同じように音楽を作る。

ライフスタイルも大切にしているけれど、基本的にはそれも、音楽を作る気持ちにする為の作業というか。

『毎日、音楽を作る』ってある時、すごく苦痛になるんですよ(笑)。

それを感じさせないようにしたい。メンタルをいつもフラットに保つ努力をしながら、日常的に音楽を作りたい、と思っています。空気を吸うみたいに。」


「スピーカーが来た」のではなく「音楽のある暮らしが、訪れた」
 

そんな日常を大切にする城さんが、グラスサウンドスピーカーを使い始めてから、あることに気がついたといいます。

「僕、今までの暮らしの中に『音楽を聴く』という時間を設けてなかったんですよ。朝から晩まで音楽作っているので、参考曲を聴いたり、新譜のレビューを書くために聴く。といった、仕事として聴くものだったんです。だから『聴く』ということは音楽を作ることよりも、構えることでした。

音楽って、たとえば読書やコーヒーと一緒に、本来はリラックスと繋がるもののはず。だけど、僕の生活サイクルの中では『聴く』のボリュームが、圧倒的に少なかったんです。」
 


グラスサウンドスピーカーが届いて、まず最初にいろんな音楽を聴いてみたところ、その衝撃的な音の解像度に驚いた。という城さん。

「iPhoneを触って音楽を流したら、自然と離れたところから音楽が奏でられた。離れていても、音質が全然変わらない。これって結構すごいことなんですよ。空間全部に広がるような構造になっていて。聞こえ方がどこにいても同じで、減衰感が本当に少ない。

あ、これはいいなと思って、2F(生活スペース)に持って行って、暮らしの中で聴き始めたんです。」
 

そこから城さんと、グラスサウンドスピーカーとの本格的な暮らしが始まった、といいます。


「寝る前、朝起きた時、ご飯の時間に、音楽を流すようになりました。それがものすごく心地よかった。そのぶん、音楽を作る時間は減るんですけど(笑)。
 

今、僕にとって一番足りないものだったのかもしれない。耳に普通に楽しむ音楽、というのが圧倒的に欠如していたから。

 
ここ数日は、毎日欠かせないものでした。スピーカーを借りた、のではなく『音楽が簡単にそこにある暮らし』をもらった、という感じでした。」
 

家具のように、植物のように、音楽が在る。
 

「歌詞がどうとか、ここのギターがどうとか、今まで用事があって聴いていた音楽が、僕にとって、植物みたいになったんですよ。

植物があると、それがどんな種類のものだろうと『そこに植物がある』という空間になるじゃないですか。

音楽と植物、好きな家具がある。そこに満たされる。

エリック・サティは『家具の音楽』として「生活に溶け込む、意識的に聞かれない音楽」を目指していましたが、まさにこれで聞く音楽は、家具のようにそこに佇むもの。

僕にとって音楽を聴くことが、新しい体験になったんです。自分の作るものに影響されそうなぐらい、カルチャーショックでした。」

そうして、今まで聴いていなかった音楽を引っ張り出してきた、という城さん。ギターソロやピアノなど、シンプルで楽器の少ない生ものの音楽が、一番合うんだとか。
 

「音楽って、人とのコミュニケーションや一人の時間の、隙間を繋いでくれるもの。それって構えてないですよね。机の上に音楽があって、しかも鳴ってる風に見せない。どこから流れているのか分からないけど、この空間には音がある。というのはグラスサウンドスピーカーの大きな強みかな、と思います。


言葉でコンセプトを聞いていても、実際に体験してみるのとでは、全然違っていました。『そういうことか!』みたいな。体験しないと分からなかったな。」

ささくれ取りが、新しい可能性に繋がる
 

「すでにスピーカーは持っていましたが、最大の欠点は有線だということ。iPhoneですぐに曲も流せないし、コンセントも必要。という二大欠点のせいで、音楽を聴くのにすごい構えてしまうんです(笑)。

(グラスサウンドスピーカーには)そういった、構える。という段階がない、というのは大きかったですね。」
 

「音楽を作るのも、聴くのもそうなんですけど、そこにハードルがあるといきなりめんどくさくなる。小さなささくれの積み重ねが、行動を遮るんです。

毎日のことですから。

音楽作りでいうと、スイッチ1つでいつでも録音できるように準備をしておく。いつでも、あ!と思ったら録れるように。

ささくれ取りは、努力して日々の中で消化できるようにするのも、作り続けるためには大事なことですね。

そういう意味では、ささくれを取ってくれたから、僕は音楽を聴けるようになった。

音楽を聴くためだけではなくって、音楽がいつもそこにある。すぐにそこにタッチできる暮らしを作れる。っていうのは、すごく大きな可能性を秘めていると思いますよ。」

年内に、8枚目のアルバムをリリース予定だそうです。

 

no.9 / 城隆之

「音と共に暮らす」をテーマに、日々の暮らしに寄り添う豊かでメロディアスな楽曲を生み出す作曲家・城隆之のソロプロジェクト。現在までに『usual revolution and nine』、『Good morning』など7枚のフルアルバム作品をリリースするほか、様々なコンピレーション作品やリミックス作品に参加。また、数々の広告音楽や主要交通機関のマシン・サウンドデザインを手がけ、実績と経験に基づく新鮮なサウンドデザインと一聴してno.9とわかる幅広い音楽性を併せ持つ作曲家でもある。