「データから生まれる、新たなビジュアルデザイン」 木村 浩康(アートディレクター/ライゾマティクス)

EDIT BY ARINA TSUKADA TEXT BY KENTARO TAKAOKA PHOTO BY TAKESHI SHINTO

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今回、超短焦点プロジェクターを使って、新たな「クリエーションの場」を提案してくれたのは、クリエイティブ集団ライゾマティクスの一員として活躍する、アートディレクターの木村浩康(きむら・ひろやす)さん。データを基軸にビジュアル生成をしたグラフィックデザインなど、デジタルならではの着想を持った作品を手掛ける木村さんに、日々のクリエーションの原点を尋ねました。

デバイスを変えると、新たな視座が生まれてくる

木村さんの所属するクリエイティブ集団ライゾマティクスの社員が、時おりミーティングやワークショップを行うというマンションの一室に、超短焦点プロジェクターが設置されました。ここで木村さんは、制作中のポスターを投影。白壁の中でグラフィックの質感を確認するという新しい用途を提示してくれました。

「現在、B全の大きさのポスターを展示用に作っているのですが社内の印刷機だと、A3までしか出力できなくて、ちょっと困っていたんですよね。毎回A3で原寸出力したものを切り貼りして大きさをチェックしていました。それが、このプロジェクターなら実際に出力しなくても、ある程度ポスターのチェックができてサイズ感がわかるのがいいなと思って。壁に貼った感じを想像しながら、自由に移動できるのがいいですね

投影中のイメージは、展覧会「ライゾマティクス グラフィックデザインの死角」の京都巡回展示のために新しく制作されたポスターデータ。これは、田中一光や横尾忠則など巨匠グラフィックデザイナーの作品、合計3000枚の画像データを解析して作られた作品です。

ここには、「データドリブン」なビジュアル制作を手がける木村さんならではの手法がつまっています。

「展覧会の開催前に田中一光さんの回顧展があったので、過去のポスターデータなどをお借りすることができたんです。その膨大なビジュアルデータを解析して、デザイナーごとによく使われている色やレイアウトを割り出していきました。

さらには各デザイナーに特徴的なデータと、それに近しい過去作品をマッチングさせて、似たような文字組みも再現しています」

ゲームからデザインの感性を享受

プロジェクターを家で使う場合は、もっぱらゲームという木村さん。マイコントローラを持参して、お気に入りのFPSゲーム『Destiny』をプレイしてくれました。

「物心ついた頃から遊んでいるゲームは、僕のアイデンティティです。日曜日はコントローラを持ったまま一歩も動かず、完全に引きこもっていますね(笑)。ゲームのビジュアルデザインからも相当影響を受けていて、2001年にリリースされたドリームキャストのシューティングゲーム『Rez』は心底興奮したのを覚えています。音楽と映像の融合から、あんなにかっこいい世界がつくれるのか、と。同シリーズのVRバージョンの新作『Rez Infinite』もこの間体験しましたよ。

ほかにもイギリスで一世を風靡したデザイン集団 デザイナーズ・リパブリックが手がけたレースゲーム『Wipe Out』のビジュアルもすばらしかったですね。いつかはゲームデザインも手がけてみたいです」

テクノロジーとビジュアルデザインの新たな関係軸

ゲームがクリエイティブの原点のひとつになったと語る木村さん。これからテクノロジーとビジュアルデザインの関係について伺いました。

「クリエイティブに興味を持ったきっかけは、母方の実家が益子(栃木県益子町)の陶芸家だったことですね。美大出身のお弟子さんがよく一緒に遊んでくれて、絵を描くのが好きになったんです。そこから自然と美大に憧れて、大学ではプロダクトデザイン科に在籍していました。

ひょんな縁からライゾマティクスに入社したのですが、当時はデザイナーが僕だけで、あとは全員プログラマー。『(IllustratorやPhotoshopなどにおいて)マウスでオブジェクトを直感的に動かすのが気持ち悪い』って言われたのをよく覚えています(笑)。彼らはみんなプログラムで絵を動かす人たちでしたから。

そこから8年経って、だいぶぼく自身の経験値も、周囲の環境も変わってきました。従来のアートディレクターの仕事は、強いワンアイデアをラフに描いてかたちにしていくことだったと思います。一方、近年のデジタルを基軸とするアートディレクターの仕事は、無数にある技術の中から最適なものをピックアップして、データを分析して、最終的な絵としてのまとまりの強度をどう紡いでいくかが問われるもの。新たな時代のセンスが求められるようになってきた分、チャレンジングで楽しい時代だと思っています」

 
ライゾマティクス 木村浩康(きむら・ひろやす)

アートディレクター/インターフェイス・デザイナー。東京造形大学卒業後、Webプロダクションを経てライゾマティクスに入社。主な仕事に「Perfume global site project」、「SAYONARA 国立競技場 Future Ticket」、「ggg グラフィックデザインの死角展」、メルセデス「Next stage with you」、NHKエンタープライズ&メディアテクノロジー 8K:VR Theater 「Aoi-碧- サカナクション」など。
https://design.rhizomatiks.com/