お墓という空間を考えることは、未来を考えること。

あなたは土に還る? それとも宇宙に行く?

 

実はこれ、お墓の話。「まだまだ先の話だし、考えなくてもいいかな……」「自分が死んだ後はもう、お墓なんていらないかな……」なんて、思ってませんか。

ライフスタイルの多様化によって、霊園の中に墓石が並ぶステレオタイプなお墓以外の選択肢が、今はたくさんあるそうです。樹木葬・手元供養・宇宙葬・大勢の遺骨を集めて巨大な仏像化(!?)などなど。

知らなかった「死後(お墓)の世界」、ちょっとのぞいてみませんか。

空間観察学Vol.4は、2016年11月29日、3331 Arts Chiyodaの3331alphaで開催されました。本日のゲストは、ランドスケープデザインを手がける建築家兼、墓地デザイナーの関野らんさん。

そして、今宵も多彩な顔ぶれの参加者が集まりました。

TV番組製作者、コンテンツデザイナー、オフィスコンサルタント、映像カメラマン、学生、IT会社勤務のお坊さん、金融機関の方、建物の設計・内装屋さん、などなど。

こんなに職業や年齢がバラバラのメンバーが、お墓の話を聞きに静まり返った夜の学校(会場の3331 Arts Chiyoda は中学校を改修した建物)へ一人、また一人と集まってきます。

怪談コミュか何か? と思いきや、これがまた、お墓への想いほとばしる熱い夜となったのでした。 

今のお墓、満足してる?

参加者への1つ目の質問は「どんなお墓に入りたい?」

答えは、大きく3つに分かれました。「いらない派」「景色のいい場所に散骨派」「入るお墓が決まっていて選べない派」。

希望は違えど、全員に共通しているのは「なんとなく、今のお墓に満足していないから、他の形にしたい」という想いです。

関野さんがそれを代弁してくれてはじめて、「ああ、そうかも。っていうか、他にどんな選択肢があるかもよく知らない……」と気付いたところで、関野さんのお墓プレゼンテーションがスタート。

関野らん(建築家/ 墓地デザイナー) 2006年東京大学工学部社会基盤学科卒業。2008年東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻修了。大学・大学院では、景観研究室にて篠原修・内藤廣に師事。2008-2011年川添善行•都市•建築設計研究所勤務を経て、2011年よりSRAN DESIGN主宰。建築・ランドスケープ•墓地設計から、イベントなどの空間デザインまで幅広く設計を手がける。主な作品に、樹木葬墓地”木立”(東京都町田市)、風の丘樹木葬墓地(東京都八王子市)、執筆論文に、集落構造を墓地と祭祀儀礼の観点から分析した、『祭祀儀礼からみる集落の空間構造に関する研究-三重県菅島を事例として-』(2008年)がある。

関野らん(建築家/ 墓地デザイナー) 2006年東京大学工学部社会基盤学科卒業。2008年東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻修了。大学・大学院では、景観研究室にて篠原修・内藤廣に師事。2008-2011年川添善行•都市•建築設計研究所勤務を経て、2011年よりSRAN DESIGN主宰。建築・ランドスケープ•墓地設計から、イベントなどの空間デザインまで幅広く設計を手がける。主な作品に、樹木葬墓地”木立”(東京都町田市)、風の丘樹木葬墓地(東京都八王子市)、執筆論文に、集落構造を墓地と祭祀儀礼の観点から分析した、『祭祀儀礼からみる集落の空間構造に関する研究-三重県菅島を事例として-』(2008年)がある。

「今日は空間観察学なので『空間』というところに絞って、お墓の話をします。」

東京大学景観研究室にて墓地の研究会も行っていた建築家・内藤廣さんに師事し、東京大学大学院の時から設計を手がけてきた関野さん。現在、「樹木葬」という新たな形の墓地を設計しています。

少子高齢化で多死社会が今後到来すると言われている現在、お墓にする土地が都市部では足りない、核家族化によりお墓の後継がいない。」という現代の問題から「樹木葬」などの新しい埋葬形式が生まれたんだそう。

「“樹木葬”というのは墓石の代わりに樹木やお花を墓標としたものです。土に還るという考えをもとにし、土にそのまま、もしくは骨壷に入れて遺骨を埋葬するもので、20年ほど前から日本の各地につくられはじめました。海外にも同様の形式で有名な墓地がいくつかあります。」

世界遺産にもなっているストックホルムの「森の墓地」や、イタリアの「ブリオン家の墓地」をスライドで見ながら墓地空間のデザイン、そもそも「墓地とは何か?」を考えていきます。

君のお墓が100年、続きますように

「お墓というものはその土地の、1.生業 2.自然環境 3.死生観 の3つが一体となって出来たものと私は考えています」と関野さん。

例えば、関野さんが大学院で研究した離島の漁村集落では、漁業を生業とし、海での死と隣り合わせの生活だったため、『生命は海から生まれて、海に還る』という考え方がその土地に根付いているんだとか。

お墓の形、とは決して偶然ではなく、生業や自然とむすびついて必然的に出来たものなのです。」

これを現代に置き換えると、“生業”→“ライフスタイル”に、“自然環境”→“(人工物を含めた)周りの環境すべて”、に置き換えられる。と関野さんは考えました。

ある人にこのような言葉を言われました。

『最先端のものを追い求めれば、次に新しいものが出てきた途端、時代遅れのものになってしまう。長い時代受け継がれてきた古き良きものを継承すれば、それは時間が経つほど価値のあるものになる。』

お墓というものは、100年、200年と受け継がれるもの。新しい形式の墓地が流行り廃りに関係なく長い目で見て人々に受け入れてもらえるように、真新しいデザインが良い、というわけではありません。古代から遺る古墳やピラミッドなどが、シンプルで美しい形であり今見ても違和感なく受け入れられるように、『現代のライフスタイルや環境にリンクしつつ、人々が受け入れやすいもの』を作りたいと思っています。」

樹木葬というものは、「土にそのまま埋葬する」という考え方。一見新しいようですが、かつては土葬していた地域も多かったという日本では、実は昔からある死生観なのです。

これからお墓は多様化していきます。海や山に遺骨をまく散骨も、遺灰を大気圏まで飛ばす宇宙葬も、思想と形が結びついて初めて、一時的な流行ではなく、後世に受け継がれるものになると思います。だからこそ、お墓が、どういう死生観を表しているのかを考えて、それを空間に表せるように設計していきたいと思っています。

「地脈」の読み取りかた

次に、関野さんが手がけた樹木葬墓地の事例を見ながら「大切にしている視点」についてのお話を。

現在、関野さんが設計を手掛け、2017年秋に竣工予定の「風の丘樹木葬墓地」(東京都八王子市)は、関東平野の端に近い場所、高尾山からくる多摩丘陵の山の尾根が連なっているところにあります。植物は1300種ほど自生しており、生態系がとても豊かな高尾山。

「まずは、この地形や環境の中にある。ということを踏まえ、100年200年と昔から変わらずに存在するもの。を考えます。これらの空間の構造のことを私は『地脈』と呼んでいて『地脈を読み取る』ということを軸として、設計をしています。」

なるべく昔の地形を読み取るために、住宅地造成前の古い航空写真などを読み取り、住宅地造成前の地形を読み取って、地脈とうまく繋がる墓地空間を作りたい、と考えた関野さん。真横から見ると、周りの尾根の力で地形が隆起したように、卵型にぷくっと膨らんでいて、多摩丘陵の尾根と美しくつながっています。

芝生のエリアが、格子状に区画分けされていて、その区画一つ一つに遺骨を埋葬していきます。区画の境界線は見た目ではわかりませんが、お墓の場所はGPSで管理されていて区画がわかる仕組みになっています。

意外とハイテク!お墓とテクノロジーの融合です。見た目上、境界線がわからないのは、このエリア一体がお墓であり、全体の空間を共有して自分たちのスペースと感じて欲しいからだそうです。

また、埋葬エリアの周りには柔らかい3次元曲面の石がぐるっと配置されており、触ったり、腰掛けたりもできて、視覚だけではなく触覚でも記憶にのこるようにと考えたんだそう。

完成イメージ

完成イメージ

現在工事中の現地の様子

現在工事中の現地の様子

不便でジメジメした場所にあるといった墓地のイメージをごろっと覆す、居心地の良さそうな空間。大きな水盤に湛えた水面と手前の舗装がほぼ面一になっており、全体が緊張感のある空間となるように工夫がされています。

ただ公園のように明るく走り回るような場所ではなく、心穏やかに祈りを捧げる特別な場所。悩み事や、話したいことを故人にそっと語りかけたくなるような。

こころを整理するための、樹木葬

この、見たこともない新しい墓地には、質問が殺到!

「どこにあるんですか」

「どうやったら入れるんですか」

「そのまま遺骨を埋めるのかと思いましたが、骨壷に入れるんですか」

と、おそらく世界で一番、お墓について熱く詰め寄る集団が生まれた瞬間でした。

ここは13年か33年経つと、骨壷から出して同じエリアの中で本当に土に還ることができるんだそう。そして、そのスペースは次の世代に引き継がれます。このように、土に還ることをなるべく自然に受け入れてもらえるように考えられた樹木葬墓地。後継がいなくても、地縁血縁ではなくこの場所を通して、次の世代に自然と受け継いでいかれるようにとの想いがこめられているんだそう。

もうひとつ、残された人が「こころの整理」をするために、関野さんが込めた思いがあるそうです。

「お葬式からのいろんな儀式は、心の整理をするためのものだと思うんです。土に還るという埋葬も同じで、ここに埋葬すると、円形に穴を掘るので直後は芝生に跡が残る。

ところが一ヶ月ほど経つと、だんだん芝生が育ってきて、その円い跡が見えなくなってくるんです。さらに時間が経つと、完全に消えてしまう。そこで『ああ、土に還っていったんだ』と感じてもらえるといいな、心の整理ができるといいな、と思っています。」

埋葬の跡が次第に消えていくに従って、残された人の心の傷も癒えていく……

想像すると、不意に落涙しそうになるほどの遺族への思いが、そこには込められているんだな。と胸がいっぱいになりました。

「地脈を読みとる」という視点をインストール

おっと、涙目になってるヒマはありませんでした。さっそく、関野さんの視点を参加者全員がインストールするために「地脈を読みとるためのトレーニング」開始です!

渋谷駅前のスクランブル交差点、群馬県の人造湖、首都高、など、それぞれ特徴のある場所の写真をスライドで見ながら、ここから読み取れる「地脈」はどういうもの?という意見を出し合っていきます。

人の流れ、地形の特徴を掴む、人工物も地脈として見る、など、ポツポツと意見が出始めました。みなさん、なんとなく掴めてきたような……?

そこで「みなさんの周りにある地脈を探してみましょう!」と、司会者。

空間観察学おなじみの、周りにいる3〜4名でチームを作りアイデアを出し合うシェアタイムです。

「遠くに富士山が見える風景や場所には『富士見』という地名がつくように、景色が(地脈に)影響を与えることってあるんじゃないかな、と思いました。」

「あれだけ形が綺麗だから、浮世絵や江戸百景などあらゆるものに影響を与えている富士山は、日本の地脈の一番大きな要素だと思います。」(関野さん)

「偉い人は高台に住むんではないか、と話しました。それって皇居のことかな、とか。京都や奈良は碁盤の目、東京湾周辺は土地が低くて人工物が多い、など、それぞれの街の特徴を挙げました。」

「穏やかなセーヌ川やテムズ川とは違って日本の川沿いは災害が多く、あまり魅力的じゃない、と言われがち。もっと盛り上がる空間になればいいと思いました。」

「山道を登る参道、寺の中心部を走る参道など、ゴールがある道、というものは軸になりそうだな、と話しました。」

「ワテラス(神田淡路町の複合施設)前のオブジェが、神田明神に向かって開いているという説があって。そういう宗教性とか人の集まる場所が地脈になりうる、という話をしました。」

「浦和は地価が高いんです。県で一番の浦和高校があるから、教育環境が充実している。教育が脈を作っている、というのもあるのかなと。同じく文京区もそうですね。」

都心にある、未来のお墓について考えてみる

「地脈、という視点をベースにこれからのライフスタイルに合ったお墓について、考えてみましょう!」

司会者の声がけで、二度目のシンキングタイムに突入します。

都市の中で、これからのお墓がどうなって行くか、どんなことができるのか?これは、私の目下の課題でもあります。キーワードは『残るもの』。少なくとも100年という単位で、みなさんにも一緒に考えていただきたいです。」

と、関野さん。

「お墓そのものに注目しました。都心にあるということで、テクノロジー化したい。墓石に故人のスライドショーを投影したり、5年毎に生前の声を録音しておき、お墓参りのたびに自動でアップデートされる、とか。」

「それって、死ななくなるってことですね!」「A.Iで故人同士が会話したりして」など、この意見には大いに湧きました。

「お墓=死、ですが今は『死』自体にもいろんな定義が出てきています。それこそAIが出てきたらどうなるか? とかSNSの死って何だろう? とか、そういう議論にまでつながっていく、と思います。」(関野さん)

「今は、お墓が自分の地縁と関係ないところにあったりして足が遠のいてしまう。お墓が家にある、という状態が都会にはフィットしているんじゃないかと考えました。アクセサリーになって持ち運べるようになってもいい。世代ごとに形を変えて、故人を大切にする価値観があっていいんじゃないかと思います。」

まさに、手元供養といって遺灰をアクセサリーにしたり、ダイヤモンドに変える技術もあるそうです。故人をいつも身近に感じながら、生きていける未来もあるのかも?

「将来的に廃線になるであろう、山手線を墓地にする。また、地下鉄の骨格が死者のための場所になる、というのも面白そう。」

「僕らのお墓はこれです。1.一家に一台 2.触りたくなる 3.デジタル化、という3つのコンセプトがあります。近代化が進んで和室のない家が増えているので、洋室にもフィットします。」

と、未来のお墓のセールスマンのような意見も。

「100年計画で少しずつお墓をリノベーションしていけるよう、建築家に設計してもらう。お墓=ネガティブじゃない文化を作って行くことが重要じゃないかと思う。地域のコミュニティを作るように、人が集まる場所にするとか。」

これらのアイデアを受けて、最後に関野さん。

「土地と人が繋がらなくなってきた今、土地に愛着を持ってもらえるきっかけが出来ればいいなと思って、場所を作っています。今のお墓は基本的に生前契約。買ってから亡くなるまで、その土地とどう関わっていくかが重要です。例えば死者を弔う明るいイベントを通してコミュニティが生まれ、だんだんその場所に愛着が湧いて「このお墓に眠る」というのが自然な想いになるように

いつも私が感じているお墓の問題を、今日、皆さんがすくい上げてくださった、という気がします。」

自分のことだけではなく、残された人のことも考える。未来の人の思いを、考える。

「地脈を読みとって、お墓を考える」ということは未来を考えること。とも言えるかもしれません。

LED電球スピーカーとグラスサウンドスピーカーから溢れる音、ゆらめく光に照らされて、学びの夜は心地よく更けていきます。

お墓という空間について、今だからこそあなたも考えてみませんか。

 

(TEXT BY SATOKO HIRANO)

(PHOTO BY TETSUHITO ISHIHARA)

今回事例にあがった、関野さんが手がけているお墓はこちら
風の丘 樹木葬墓地