建築家 佐野文彦が仕掛けた「芯」を体感する空間。

 

現在、銀座のソニービル5F にて開催中の展示「新しい日本の居住空間」。Life Space UX をたばねるソニーの斉藤が、この空間に託した想いは以前ご紹介した通り。

「新しいのに、懐かしい」を体感できる場所。ソニービルでの和空間展示は3月31日まで

こちらの記事で、空間づくりのキーパーソンとして登場した建築家、佐野文彦さん。数奇屋大工としてのバックグラウンドを元に、展示の空間デザインを担当しました。今回の記事では、佐野さんの目線から、本展示に関する狙いを伺います。

佐野文彦さんが考える、『新しい日本の居住空間』

いきなり種明かしになりますが、新しい日本の居住空間とは? という問いに対しての佐野さんの考えは、新しい日本の居住空間とは、テクノロジーが自然に溶け込む空間とのこと。今回の展示も、スッキリと縦横が整えられた気持ちのよい空間に、自然素材と、現代に暮らす私たちが手放せない音楽・照明・映像が一体化しています。

ただ、「新しい日本の居住空間」は、自分たちのこれからの暮らしそのものです。テクノロジーという単語が入るとなんだかデジタルの要素を連想してしまったりしてしまいますが、ソニーからの『新しさを感じつつも、突飛すぎず、あくまで日常生活に寄り添う空間をつくる』という難題に取り組むにあたって、鍵となったのは未来の話ばかりではありません。

ここで大事にしたのは、「では、日本的な空間とは?」という、「そもそもの話」をきちんと見つめ直すことでした。

どこに線をひいても、ぴしっと揃う気持ち良さ

実際に訪れた際にはぜひ試してみて欲しいのですが、一呼吸おいて、展示空間の中で気に入った場所に佇んでみてください。落ち着きがありつつも、澄んだ空気を感じられると思います。そして、「この空間、あちこち真っ直ぐだなあ」と気づくはず。

建築の用語で柱芯、壁芯などと言いますが、芯=中心であり、この芯を狙うのが日本的な空間の共通項。ソニービルの5F には、佐野さんによって作り上げられた、たくさんの芯があります。

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この”芯”に関して伺った際に、Life Space UX 担当の森原が一言。

「どこに線をひいても、全部ぴしっと揃っているんですよね。和空間に来られたゲストの方が口々に『すごく落ち着くんだけど、気が引き締まる、スッと背筋が伸びる気持ちよさがある』というのは、『芯を狙って』作られているからなんでしょう。」

と、実際に体験した人からの声も踏まえて、納得の様子。

都会の生活のなかに、自然に近い空間を

最後に、この空間を作り上げていくにあたってポイントにしたことをいくつか。

今回の展示はテーマを『市中の山居』と掲げていますが、佐野さんはこのコンセプトづくりから関わっています。

「かつて千利休ら茶人たちは都会の生活のなかに自然に近い空間をつくることで、その対比を楽しんでいたと言われています。そこで今回の展示スペースでは都会の生活と自然を融合させ、さらに現代の日常生活に日本の民家らしさ、また日本の和空間を表現しました。

そのなかでも特に意識したのは、境界線を曖昧にするということ。屋内に庭を作る、庭を越えると天井があり、テーブルがあり、その奥に庇(ひさし)があって、さらにその向こうに茶の間がある……。そういった一つひとつの境界線を曖昧にし、空間全体で『市中の山居』を表現しました。」

また、石や紅葉、苔は展示だから偽物を…ではなく、全て本物を使っているところもこだわりです。」

「日本建築と組み合わせることの良さは、家電が正面に立つのではなく、空間に溶け込んでいくような新しい価値観と、快適さだけではなく、無駄もあることかなと思います。

将来まで長く残していけるものとして、手間をかけ丁寧に作っていく技術。そういうものが合わさった『新しい何かを考える、ひとつめの場』にこの空間がなれればいいですね。」

展示「新しい日本の居住空間」は、ソニービルが現在のかたちでの営業を終了する最終日の3月31日まで開催されます。芯を狙った空間を体験できる場所に、ぜひお越しください。

(TEXT&EDIT BY AYUMI YAGI)

佐野文彦(さの・ふみひこ) 1981年、奈良県生まれ。京都、中村外二工務店にて数寄屋大工として弟子入り。設計事務所などを経て、2011年佐野文彦studio PHENOMENONを設立。大工として、技術や素材、文化などと実際に触れ合った経験を現代の感覚と合わせ、新しい日本の価値観を作ることを目指してデザインやインスタレーションをてがけている。2014年度ELLE DÉCOR Japanヤングジャパニーズデザインタレント、2016年度文化庁文化交流使。現代における「茶の湯」のあり方を探求し続けるアート集団『The TEA-ROOM』の創立メンバー。 http://fumihikosano.jp/

佐野文彦(さの・ふみひこ)
1981年、奈良県生まれ。京都、中村外二工務店にて数寄屋大工として弟子入り。設計事務所などを経て、2011年佐野文彦studio PHENOMENONを設立。大工として、技術や素材、文化などと実際に触れ合った経験を現代の感覚と合わせ、新しい日本の価値観を作ることを目指してデザインやインスタレーションをてがけている。2014年度ELLE DÉCOR Japanヤングジャパニーズデザインタレント、2016年度文化庁文化交流使。現代における「茶の湯」のあり方を探求し続けるアート集団『The TEA-ROOM』の創立メンバー。
http://fumihikosano.jp/


【建築家 佐野文彦とソニー Life Space UX が提案する「新しい日本の居住空間」】

展示期間:2016年10月26日〜2017年3月31日
営業時間:11:00〜19:00
定休日:なし
会場:東京・銀座 ソニービル5F ソニーイノベーションラウンジ(東京都中央区銀座5-3-1)
展示情報ページ:http://www.sony.co.jp/Products/products-for-life-space/news/report_20161024.html