個人のユーモアや遊び心すらも、空間スタイリングの一部と捉えて。

ソニービルで開催中の展示、「新しい日本の居住空間」をつくりあげた様々な領域のクリエイターたちの目線からの見所をお届け!

コンセプト・体験デザインの松村さんの記事

シンプルだからこそ、カスタマイズの余地がある。茶室とLife Space UX の共通項

から続いて、本記事では空間スタイリングを手がけた山田研一さんにお話を伺います。

 

「市中の山居」というキーワードを、どう表現する?

今回の展示のテーマでもある「市中の山居」とは、都会の中で感じる侘び寂びのことを指します。このテーマを聞いた時に、山田さんの頭の中にはどんな空間のイメージが広がったのでしょうか。

山田さん「テーマを聞いて、はじめに浮かんだのは『界』という言葉です。境界・結界・異界といった目には見えにくい感覚的で空間的なイメージです。

『市中の山居』には、その場所がある土地や建物である外部と、山居のある内部の2つの空間に対して、どのように境を創り出すかという、その外部と内部のコントラストにテーマの広がりがありそうだなと感じました。

銀座のソニービルという建物が持つ歴史と立地だけでも、日常とは違ったコントラストは生まれそうですが、そこに訪れる人と空間、空間とモノ、人とモノとの関係にも新しい体験があるのではないかという視点から、空間・人・モノの3つの軸でイメージを考えていきました。」

テーマという無形物を、かたちあるものにしていく

「市中の山居」というお題を、空間のスタイリングで表現するには? そのために、山田さんが行ったこととは。

山田さん「前出の3つの空間・人・モノという軸に加え、Life space UX の持つ『体験』といったテーマもあったので、単にモノをバランスよくレイアウトするだけでなく、そこにプラスで体験するにはどういったものがあったら良いかを考えました。

展示空間に並ぶアイテムの数々は、山田さんがピックアップしている

展示空間に並ぶアイテムの数々は、山田さんがピックアップしている

そこでまず、設置するモノに理解や教養を与えてくれる本と一緒にスタイリングすることを考え、選書をブックディレクターの山口さんにお願いしました。

棚の中央にある『李禹煥の版画』は、はじめから置こうと考えていて、隣には彼の著書である『余白の芸術』を並べました。モノ派を主導した李禹煥ですが、石や木など、素材そのままの物体と空間、その関係性において、何か感じられるものがあれば、と思っています。

また、広島から『叢のサボテン』を大小2つ置いています。2つとも突然変異の綴化したサボテンで、異界の形相をイメージしています。手前みそですが、僕が手がけている10¹² TERRAの『Viewing Stone』は、ガラスの箱に白砂と石、棚の上に小さな風景を創り出すことができればという想いで置いています。」

山田さんの、お気に入りの場所

山田さんは空間全体を見通すポジションでしたが、空間をトータルで見た中でも、お気に入りの場所・モノは何だったのでしょうか?

山田さん「体験という意味で、触ることができるモノ、ストーリーや仕掛けのあるモノを所々に忍ばせています。

例えば、棚にある黒い石「テクタイト」は、隕石衝突によって作られる天然ガラス。4K超短焦点プロジェクターの上にある卵状の石は、割ると化石が入っているかもしれない「ノジュール」と呼ばれる石。かなりの確率で入ってはいないのですが……天然のガチャガチャのようなものです。超短焦点プロジェクターの隣にある「泥だんご」は、表面がすべすべとした球体ですが、こちらはぜひ手に取って触ってください。

見た目だけではわかりにくいのですが、ただの石みたいに見えるものも能動的に観ることで違ったものに感じられるものもあります。見立てにも近い感覚ですが、時間軸を持ったものや観る人の記憶や知識を刺激するもの、ユーモアや遊び心も、空間の中にあると独特な個性を帯びた空間が創れるのではと考えています。」

佐野さんの設計による気持ちの良い空間を引き締める、 センスの良い品々。あれ、これってなんだろう? と想いを巡らせてみると、またちょっと違う感じ方ができるはず。そうしてあなたが考えたこと、感じたことさえも、あの空間の個性になるのです。

「新しい日本の居住空間」は、ソニービルが現在の姿で営業する最終日、3月31日まで。多種多様なクリエイターの個性が溶け合った日本の居住空間と、あなたの個性を混ぜてみませんか?
 

(TEXT&EDIT BY AYUMI YAGI)

山田研一(やまだ・けんいち)

1981年愛知県名古屋市生まれ。WEB制作会社を経て、2012年からプロダクトブランド「10¹² TERRA」を始動。デザインディレクター・プランナーとして、WEB広告やアプリ開発、サービスの企画・デザインを中心に、インテリアやプロダクトの領域まで横断的な分野でデザインを手掛ける。


 【建築家 佐野文彦とソニー Life Space UX が提案する「新しい日本の居住空間」】
 
展示期間:2016年10月26日〜2017年3月31日
営業時間:11:00〜19:00
定休日:なし
会場:東京・銀座 ソニービル5F ソニーイノベーションラウンジ(東京都中央区銀座5-3-1)
展示情報ページ:http://www.sony.co.jp/Products/products-for-life-space/news/report_20161024.html