本で繋げる、「これまでのくらし」と「これからのくらし」。

空間スタイリングを手がけた山田さんからバトンタッチし、本シリーズのラストを飾るのは、テーマと関連する本を選んでくれた山口博之 (ブックディレクター)さん。

会場のあちこちにある、気になる本の数々。テーマを本で表現する際の狙いを、山口さんにお伺いしました。

「市中の山居」ならではの、本を選ぶためのイメージ

今回の展示のテーマでもある「市中の山居」とは、都会の中で感じる侘び寂びのことを指します。このテーマを聞いた時に、山口さんが感じたイメージとは。

山口さん「いつでも賑やかな東京という街の中にあって、周囲の時間を忘れさせてくれるような時間感覚が得られる場所になるのかなと想像しました。

『市中の山居』という言葉そのものは知っていたので、銀座の街中に茶室がつくられれば、ゆったりと居心地のいい場所になるであろうこともあわせてイメージできました。」

これまでを本で学べば、これからが見えてくる

「市中の山居」というテーマを、山口さんの専門分野である本で表現するには?

山口さん「現代的な市中の山居、しかも茶室というあり方からのくらしを考えたとき、なかなか普通の家で同じことを体験することは難しく、それに関する本だけを選んでみても、そこからそのまま自分のくらしをイメージするのは難しいかもしれないなと思いました。

『茶の本』やワビサビといった茶道が生み出した美意識に関する本や、『陰翳礼讃』のような影/陰が持つ日本人が育んできた自然と呼応する美学に関する本は、茶室に繋げるべく選びました。

その一方で茶室から遠い我々の生活を、これまでの日本人のくらしと繋げるべく選んだのが、『ユカ坐・イス坐』や『しきりの文化論』など、日本人の起居動作や“しきる”という住居のあり方ともつながる考え方に焦点を当てた本たちです。

急にガラッと生活が変わるのではなくて、徐々に様々なディテールが変わっていき、それが積もり積もっていつの間にか大きな変化が生まれていく。そこからいまの自分の生活を見つめると、これからのくらしかたが見えてくるかもしれないな、と思って選書しました。

加えて、これからの生活をイメージする手助けとなるようなSFや未来を考えるような本も選びました。」

ここにあるのは、「これからのくらし」

展示空間の中でのお気に入りポイントを伺ったところ、本を選んだ山口さんならではの過ごし方をオススメいただきました。

山口さん「音や光と連動するモノや空間全体をトータルに楽しんでいただきたいです。が、せっかく本を置かせていただいたので、ゆっくりしてもきっと怒られないはずですし、1冊本を読み切るくらい長居してくれる方がいたら、嬉しいですね(笑)。」

そうなんです、展示会場でゆっくり本を読んでもらって大丈夫。もちろん、怒られることなんてありませんのでご安心を。

© Seiji Fujishiro/HoriPro

© Seiji Fujishiro/HoriPro

ちなみに、山口さんによる選書に関するポイントは、展示会場のお隣の本屋「EDIT TOKYO」にて開催されたトークイベントからも伺うことができます。

ストレートに、和の空間に関する本だけ並べても面白くないし、どうしようか……。そんな山口さんが本を選んだポイントは、いかに。こちらの記事も併せてお楽しみくださいね。

本と民俗学の視点から考える「日本の居住空間における ”これまで、そしてこれから”」

……と、クリエイター5名それぞれの視点から、展示「新しい日本の居住空間」に関してをお届けしてきましたが、本シリーズはひとまずここまで。

ソニービルの現在の形での営業日も残りわずかとなりました。ラストの3月31日に向けて、全フロア見所満載です。1階から順々に制覇するもよし。もちろん、展示会場でゆっくり腰を据えて本を広げるでもよし。

仕掛け人の話を聞くと、展示タイトルの「新しい日本の居住空間」という意味を改めて考えてみたくなりませんか? そう、銀座のど真ん中にあるのは、居住空間なのです。そこは、あなたの思い思いに過ごせる場所。ぜひ、これからのくらしをイメージしながら、展示を楽しんでください。

(TEXT&EDIT BY AYUMI YAGI)

山口 博之(やまぐち・ひろゆき)

ブックディレクター・編集者。
1981年仙台市生まれ。立教大学文学部英米文学科卒業。大学在学中の雑誌「流行通信」編集部でのアルバイトを経て、2004年から旅の本屋「BOOK246」に勤務。06年、幅允孝が代表を務める選書集団BACHに入社。様々な施設のブックディレクションや編集、執筆、企画などを担当。16年に独立。ブックディレクションをはじめ、さまざまな編集、執筆、企画などを行ない、三越伊勢丹のグローバルグリーンや花々祭などのキャンペーンのクリエイティブディレクションなども手がける。

https://www.instagram.com/yamaguchi_h/


 【建築家 佐野文彦とソニー Life Space UX が提案する「新しい日本の居住空間」】
 
展示期間:2016年10月26日〜2017年3月31日
営業時間:11:00〜19:00
定休日:なし
会場:東京・銀座 ソニービル5F ソニーイノベーションラウンジ(東京都中央区銀座5-3-1)
展示情報ページ:http://www.sony.co.jp/Products/products-for-life-space/news/report_20161024.html

 

【本シリーズのこれまでの記事はこちらから!】

ソニーでLife Space UX を統括する斉藤

「新しいのに、懐かしい」を体感できる場所。ソニービルでの和空間展示は3月31日まで

 

空間全体のデザインを手がけた建築家・佐野文彦さん

建築家 佐野文彦が仕掛けた「芯」を体感する空間。

 

体験デザインを担当した茶道化・松村さん

シンプルだからこそ、カスタマイズの余地がある。茶室とLife Space UX の共通項

 

空間をスタイリングした山田さん

個人のユーモアや遊び心すらも、空間スタイリングの一部と捉えて。